告知「TSとTGを支える人々の会」催し(1999年6月20日)
「性同一性障害の手術療法(非公開)
※誤って記載された「せたがや女性センター・らぷらす」は、6月6日公開講演会の会場です。20日の会場ではありません。お間違いのないようにされてください。訂正してお詫びします。
第63回「TSとTGを支える人々の会」催し・講演会/非公開 性同一性障害の手術療法話し手:原科孝雄さん、井上義治さん、高松亜子さん 今回は、参加者の方々から、たくさんのリクエストを寄せられていた手術療法がテー マです。皆さんも良くご存知の通り、1998年10月に、埼玉医科大学総合医療センターで 、日本で初めて「公の医療」行為としての性別再指定手術が行なわれました。同大学形 成外科医で、その時の執刀医でもある方々に、FtM( 女性から男性)、MtF(男性から女 性)両 方の場合についてお話ししていただきます。◆話し手紹介◆ ★原科孝雄さん 「形成外科、マイクロサージャリー、性転換手術」 形成外科とは--先天性、後天性に生じた、主として身体外表面の先天異常、変形、醜形 などを手術的にできるだけ正常に戻すことにより、その患者を社会生活へ復帰できるよ う手助けすることを目的とする--いわば、外科手術によるリハビリテーション科と言え ます。性器の手術は、男性では尿道下裂・マイクロペニスなどの先天異常や外傷などで 陰茎形成術を、女性では先天性膣欠損症で膣再建術を手がけてきました。 そのなかで、私がマイクロサージャリーを専門としていたことが、現在の性転換治療 へ繋がりました。マイクロサージャリー(微小外科)とは、手術用顕微鏡を使って、細 い血管や神経を縫合することによって組織を別の場所に移植する技術を意味します。こ のマイクロサージャリーの技術で再建した陰茎で、患者さんの奥さんが妊娠し子供がで きたことが報じられたことから、FTMの患者さんから陰茎形成手術を頼 まれたのが始ま りです。 形成外科、マイクロサージャリー、陰茎形成術ほか性転換手術などについてスライド を通して説明します。 ★井上義治さん 「性同一性障害の外科治療 FTMの治療」 1998年10月に埼玉医科大学総合医療センターでFTMの方の手術を行いました。今回はそ の手術の詳細に ついて説明します。 手術の内容は、乳房切除術(乳線と皮下の脂肪を切除し、乳輪の縮小と乳輪を正しい 位置に直す手術)、 子宮卵巣摘除術(開腹して、子宮と卵巣を切除する手術)、尿道延長術(外陰部の皮膚 と腟の粘膜を利用して、尿道を延長して立位排尿を目標とする手術)の3つの手術を同時 に 行いました。3つの手術をいっぺんに行うため、利点としては、入院1回なので費用、 時間を節約できること、陰茎再建を希望しなければ これで外科治療を終了できることで す。 欠点としては、手術の侵襲が大きいので、痛みも強く、出血量もそれだけ増えるこ とです。 今回の治療経過中、なんの合併症もなく、患者さんは退院しました。我々も細心の注 意を払って治療を行い、また患者さんの快復力も良好であったことが大きく寄与したも のと考えられます。 一般に、外陰部の手術は、術後の感染、縫合不全、尿路狭窄などの合併症を起こす率 が比較的高く、美容外科での治療後に、当センターを受診する患者さんが大変多いのが 現状です。慎重に治療先を選ぶ必要があると考えます。 ★高松亜子さん 「性同一性障害の外科治療 膣形成術」 FTMの手術についで、MTFの倫理委員会への申請が決まりました。(99年4月現在) これまでMTFのSRSは、FTMに比べれば簡単で1回の手術で済むため、多くは海外で、時 にはアンダーグラウンドで行われてきました。しかし言葉の問題や異なる医療事情、限 られた滞在期間、また闇治療であることなどの理由で、手術前の説明や術後治療が十分 であったとはいえません。もともと、外陰部の手術では感染や縫合不全などの合併症を 起こす確率が非常に高く、細心の注意が払われなければならない場所なのですが。 今回は、膣形成術をテーマに、手術前に医師と確認・合意しておかなければならない 点、手術方法の紹介と適応そして限界、術後合併症、術後のケアなどについて、海外文 献を紹介しつつお話しします。 ◆話し手紹介◆ ★原科孝雄(はらしな・たかお)さん 1939年生まれ。65年、慶応義塾大学医学部卒業、形成外科学教室入局。73年、マイク ロサージャリーの研究のため、米国留学。84年、慶応義塾大学形成外科助教授。87年、 埼玉医科大学総合医療センター形成外科教授、現在に至る。埼玉医科大学ジェンダーク リニック委員。 専門はマイクロサージャリーによる頭顎部腫瘍切除後再建術、四肢再建術、乳房再建術 、裂形成術など 。 日本形成外科学会基礎学術集会会長。 日本マイクロサージャリー学会前会長 国際マイクロサージャリー学会創設会員 Harry Benjamin International Gender Dysphoria Association会員 〈論文〉 「性転換症事始め,国内事情経過報告」 形成外科 41(6)509-513、1998 「性転換手術の実際」 産婦人科の世界 51(2)169-175、1999 ほか多数 ★井上義治(いのうえ・よしはる)さん 1956.8.5 群馬県前橋市生まれ 1981.4. 1 慶應義塾大学医学部入学 1987.3.31 慶應義塾大学医学部卒業 1987.5.1 慶應義塾大学医学部研修医(形成外科) 1989.5.1 栃木県立がんセンター臨床研修医(外科) 1992.7.1 慶應義塾大学医学部助手(形成外科) 1993.7.1 メルボルン大学医学部客員講師(形成外科) 1995.5.1 社会保険埼玉中央病院部長(形成外科) 1997.6.1 埼玉医科大学総合医療センター講師(形成外科) 〈論文〉 「性同一性障害に関する我が国の現状」 産婦人科の世界 51(2)121-125、1999ほか ★高松亜子(たかまつ・あこ)さん 1988年久留米大学医学部卒と同時に同形成外科へ入局。慶応大学形成外科助手を 経て、92年埼玉医科大学総合医療センター助手となり、現在に至る。日本形成外科学 会認定医。マイクロサージャリー、形成外科一般の臨床に関わり、97年、同大原科孝 雄教授とともにハリーベンジャミン国際性同一性障害学会に参加。それ以降、性同一性 障害の治療にたずさわるようになった。埼玉医科大学ジェンダークリニック委員。 〈論文〉 「ジェンダークリニック受診者182名の分析」 日形会誌 18(12)623-634、1998 「ジェンダークリニックの実際」 産婦人科の世界 51(2)127-134、1999 ほか 【日時】1999年6月20日(日) 13:10 〜16:30 【主催】「TSとTGを支える人々の会」 【協力】「FTM日本」 【会場】都内の公共機関 【参加費】1000円(資料代込み/カンパ歓迎!) 【問合わせ・連絡先】※変更したので、ご注意下さい。 〒156−0044 東京都世田谷区赤堤二郵便局留 「TSとTGを支える人々の会」 ※住所には、必ず「赤堤ニ郵便局」と漢数字の「二」を入れて下さい。そうしないと、 別の郵便局に配達されてしまいます。 当事者・家族・パートナーの方々へ 今回の催しは、マスコミの取材を含む一般公開の催しです。参加者のプライバシーに ついては会としてできる限りの配慮は致しますが、皆様におきましても各自一層のご注 意をされた上でご来場ください。 ○取材を希望するマスコミ関係者の方は必ず事前の申し込みをお願いいたします(事前 のご連絡がない場合、取材をお断わりする可能性があります)。また、客席やロビー、 会場周辺などでの参加者に対する取材、撮影などはご遠慮ください。 ○一般の方は予約は必要ありません。 ○取材申し込みをされた方以外は、会場へのカメラ、ビデオカメラ、テープレ コーダーの持込みは禁止とさせていただきます。 ○他人に迷惑をかけるような言動をする方には、退場をお願いする場合があります。◆「TSとTGを支える人々の会」(Trans-Net Japan)とは◆ 埼玉医科大学倫理委員会の答申発表をきっかけに、日本国内に性同一性障害のための 自助支援グループがないのはおかしいという思いから発足しました。1996年8月か ら、学習会や体験交流会、家族会などを行なってきました。普段の活動は、プライバシ ーへの配慮から参加者やその家族、パートナー、支援者(医療関係者、カウンセラーな ど)に対象を限定し、その参加者は99年2月までに約500人(公開時を除く)にの ぼっています。◆トランスジェンダーとは◆ 広義には、自分の身体の性別やそれに属する社会的、文化的性別に対して何らかの違和 感や不快感を感じている人。(狭義では、その中でも、反対の性での生活もしくは、既 存の性役割にとらわれない形での生活を望み、性転換手術までは望まない人)。