南野議員による「性同一性障害勉強会」発足についてのコメント
 
 

TSとTGを支える人々の会 運営メンバーは、2000年10月11日、
南野議員による「性同一性障害勉強会」発足について、コメントしました。 

 


2000年10月11日
 南野議員による「性同一性障害勉強会」発足についてのコメント
                  TSとTGを支える人々の会
(Trans-Net Japan:TNJ)
                                運営メンバー一同


  当会は1996年に発足した、性同一性障害の当事者を中心とした自助・支援グループです。普段は、当事者やその家族、パートナー、支援者(医療、法律関係者など)を対象に活動を行ない、これまでに約650名が参加しています。また、公開のシンポジウムでは、一般の参加者も約600名が参加しています。
 本日、南野知恵子参議院議員(自民党)などが中心となり、性同一性障害の当事者が戸籍上の性別を訂正・変更できる可能性について、立法化を視野に入れた検討を行なう勉強会(名称「性同一性障害勉強会」)を実施していくとの発表がありました。
 これについて、性同一性障害の自助・支援活動に携わっている当会の、運営メンバーからのコメントを以下に記します。なお、運営メンバーの多くは当事者であり、日頃の会の活動や生活をしていく上での実感を踏まえたコメントとしてご理解ください。



 国内では、性同一性障害の当事者は、本人にとって望ましい性別で暮らすことができた場合でも、公的な書類(戸籍、住民票、パスポート、各種資格・免許証、投票用紙、社会保険関連の書類など)の性別が、外見や社会生活上の性別と食い違っているため、さまざまな不利益や差別を被ってきました。
 住民票によって出生時の性別がわかってしまうため、謂れのない差別を受け、就職の意志があり能力があっても職を得ることができない、また、職を得ることができた場合でも社会保険の手続きができない、住宅が借りられないといった状況に追い込まれ、生活が困
難となる当事者が数多くいます。また、本人であるかどうかを疑われたり、性同一性障害であることが明らかとなってしまうことでトラブルに巻き込まれるなどの怖れから、安全に海外渡航ができない、さらに生活上の身分と戸籍との違いが周囲に露見した場合、当人
の地域社会での生活が困難となる怖れがあることから、投票にも足を運べないといった形で基本的な権利が奪われています。
 欧米の多くの国では、立法化や行政の対応、裁判所の判断などにより、公的な書類上の性別を訂正・変更することが認められています。裁判所の判断については、日本では公になっている先例がなく、本人にとっては少なくない費用と時間をかけて裁判を行なっている当事者もいますが、その見通しは明らかではありません。
 どのような形であっても、立法化に向けた動きが顕在化することは喜ばしい限りです。当事者が一市民としての暮らしを送ることができるようなきっかけが、ようやくできたと言えます。今後、どういった条件で訂正または変更を認めるかといった詳細を検討していくことになるのでしょうが、できるだけ当事者の生の声を聞き、実態に即した法案としていただけるようにお願いしたいと思います。
 同時に、政治や行政の担当者を含め、殆どの人々が正確な知識を持っていないため、さまざまな偏見が存在してきたことに、人権上、配慮を要します。医師の中でも専門家と言える人はごく僅かです。今後の動きがこのような偏見に左右されないよう、お願いいたします。


(注)性同一性障害

いわゆる「心の性」と「体の性」が食い違う状態で、医学的には「自分の肉体がどちらの性に所属しているかをはっきり認知していながら、その反面で、人格的には自分が別の性に属していると確信している状態」とされています。原因については胎児期の性ホルモンの影響などが議論されており、治療としては、精神科医の診断やカウンセリングの結果に基づき、肉体を「心の性」に近づけるためのホルモン療法や手術療法などが行なわれます。また、同性愛とは異なる現象とされています。


◆TSとTGを支える人々の会 運営メンバー

 森野ほのほ(主宰) 上川あや    虎井まさ衛    野宮亜紀
 東優子       森本エム    山口いさえ    山路明人

◆本件についてのお問い合わせ先

 e-mail :  tnjapan@yahoo.com



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