性同一性障害当事者のトイレ利用に伴う問題とその改善についてのお願い「TSとTGを支える人々の会」では、1999年2月10日、東京ウィメンズプラザに、下記の
「お願い」をお渡ししました。
1999年2月10日東京ウィメンズプラザ
鍛冶 千鶴子館長殿
木谷 正道事務局長殿TSとTGを支える人々の会
運営委員一同性同一性障害当事者のトイレ利用に伴う問題とその改善についてのお願い
私たちの会は1996年7月、埼玉医科大学倫理委員会が、性同一性障害(※1)の治療は正当な医療行為であるという答申を発表したのを機に、当事者の自助・支援グループの必要性を感じ、同年8月に発足したものです。
小会は1997年1月より、貴会館の使用をご承認いただき、これまでに、貴会館で延べ15回の催しを開いております。性同一性障害当事者らの活動ということで、使用後に提出する会場の利用状況の報告書に、男女別の合計を記入しないことを認めていただく(※2)など、特別なご配慮いただき、誠にありがとうございます。おかげさまで、毎回、気持ち良く利用させていただき、参加者一同、深く感謝しております。
しかしながら、参加者にとって、ひとつ頭の痛い悩みがございます。それはトイレの問題です。
性同一性障害者の中には、学校や職場など社会生活の場で、トイレのことが壁になる方たちが少なくありません。空いているトイレや男女兼用を探し回って使う人、我慢して膀胱炎や腎炎になる人、男女別トイレの使用に耐えられず不登校になったり、出社できなくなる方もいます。たかがトイレと思われる方もいるかもしれませんが、この問題で苦労されている人々が大勢います。
戸籍上男性であっても、性自認(自分をどの性に属すると思うか)が女性である場合に男子トイレを利用することは耐えがたい苦痛であり、また、女子トイレを利用する場合、とがめられたり、奇異な目で見られるのではないかと心配に思う方がいます(※3)。戸籍上女性であって、性自認(自分をどの性に属すると思うか)が男性である場合は、その逆となります。
実際に小会の催しの前になると、毎回、会事務局には、「トイレは男女、どちらを使えばよいのでしょうか」などの質問が寄せられています。事務局としては、「ご自分で責任のとれる範囲で、自分にあっていると思われる方、社会的に支障がないと思える方をご利用ください」「男女別のトイレをご使用になるのに抵抗があるようでしたら、障害者用トイレがあるので、そちらをお使いになったらいかがですか」と助言しています。
現在に至るまで会の参加者の多くは、自ら社会的に支障がないと思われる方を選択して利用しており、これまで、一般の参加者との間でトラブルが生じたことはなかったと認識しております。
しかし、性同一性障害者が、男女別トイレや、障害者用トイレを利用してもいいのだろうかと抵抗感のある当事者もいます。
そこで、会としては以下の2点をお願いしたく存じます。
1) 性同一性障害の当事者が、それぞれの心身の状況に合わせて、社会的に支障のない範囲で、女子トイレ、男子トイレ、障害者用トイレを利用することをご理解ください。2) 障害者用トイレに、「ユニセックス」または「性別を問わずお使いいただけま
す」等の表示も加えてください。
特に2については、「週刊朝日」1998年7月17日号の「性同一性障害 男か女かで悩む子供たち」の記事に、米国で、実際にそのような事例があることが記載されています。また、同記事で取材に応じている建築家の大江さんによると、ユニセックスと表示のあるトイレは、若い夫婦が子供のおしめ交換を一緒にするのにも活用されるなど、評判が良いそうです。なお、貴会館ホールで、99年3月21日に埼玉医科大学の原科孝雄教授による主催で、「第一回GID(性同一性障害)研究会」が行なわれる予定です。恐れ入りますが、その時には、多くの当事者や関係者が参加することになると思いますので、それまでに対応していただけますと、幸いです。
どうか、上記の事情をご了解いただき、性同一性障害の当事者も安心してトイレが使用できるように、ご配慮をお願いいたします。
なお、この件についてのご連絡は、下記連絡先までよろしくお願いいたします。
〒156−0044東京都世田谷区赤堤二郵便局留
「TSとTGを支える人々の会」(TNJ)
主宰 森野ほのほTEL 090−3506−4843
※1 「生物学的には完全に正常であり、しかも自分の肉体がどちらの性に属しているかをはっきり認識していながら、その反面で、人格的には自分が別の性に属していると確信している状態」(日本精神神経学会「性同一性障害に関する答申と提言」より)。最近の研究では、脳の構造説など、性転換症の生物学的要因に関する研究も進んでいる。※2 性と一言で言いましても、性染色体、ホルモン、性自認、外見上、戸籍上の性など、多層性があります。当会の参加者には、単純に男と女で分けられない方が大勢います。また、「戸籍上の性別」は、会で参加者に確認していないため、主催側も把握していません。
※3 のぞきなど反社会的行為を行なわない限り、性同一性障害者が心の性のトイレを利用することは軽犯罪法には触れないというのが、性同一性障害に詳しい法学者や弁護士の見解です。
以上
[ホーム][お知らせ]